最近食べてうれしくなったもの
先々週から先週にかけては、少しだけ忙しく移動した。私にとっては珍しいことだったから、普段の生活圏内にはないおいしそうなものを道中で見つけちゃうと、つい手を出していた。
とはいえ旅行ではなく、地元と東京を新幹線で往復しただけだったから、おいしいものを見つけた場所は静岡駅と東京駅だ。(5日間で2往復した。)
家の近所には絶対にない味だったし、そういう日常にない、おいしいと話題になるような物を食べに行ったり買いに行ったりすることって最近なかったから、なおさら元気と感動を摂取したと思う。ちょっとした感動をちょっとだけ記録しておきたい。
中津川 栗きんとん
百貨店の催事で見かけることが多いかもしれない。中津川の名物、栗きんとん。
私はずっと中津川というお店の栗きんとんなのかと思っていたけど違いました。
栗きんとんって聞いたら私はお正月のおせちに入っているような粒の大きな栗と黄色い餡が混ざったものを思い浮かべる。でも中津川の栗きんとんとして売っているものはそれとは全然違う。蒸してつぶした栗に少しのお砂糖を混ぜて茶巾しぼりにしたものが、中津川の栗きんとんだった。栗きんとんなら私は中津川タイプが断然好みだ。
検索してみたら、中津川という地域にある和菓子屋さんがそれぞれ茶巾しぼりタイプの栗きんとんを出していました。その地域の名物だったんだね。
中津川って岐阜県なんだけど、静岡駅のキオスクで静岡土産にまぎれて売られていた。(山梨の信玄餅アイスとかもあったから東海つながりなのかな。)そこで売られていたのは松月堂という和菓子屋さんの中津川栗きんとん。見つけて、つい買ってしまった。視界に入ってから一瞬で決断した。ひと箱6個入り。
材料が栗と砂糖だけだから、やわらかい甘みと素朴な栗のお味でした。ほぼ栗。やさし~い。ほんのり薄くて黄色っぽいような茶色っぽいような自然な栗の実の色。ひとくちで食べようと思えば食べられちゃう大きさだけど、それはしたくない感じの上品さのかたまり。美・味。
重すぎず軽すぎず、ほっくりなめらかな舌触り。うさん臭くない本物な和栗の香りもした。じんわり味わいたい季節になりましたな…と心の芭蕉に話しかけてしまう。この栗の風味にはコーヒーだと強すぎるから、おいしい緑茶と一緒にいただきたいですな。(心の芭蕉は脆弱なので残念ながら句は詠めない。)
気分だけは畳に正座でした。毎回ひとつに5口くらいかけて食べた。細かく長く味わっていたいお菓子だった。
賞味期限が数日しかないのが残念。素材がシンプルだからこそのお味だけど、一度にたくさん買って、毎日栗きんとんウィークやー!ってできない。無念。
「栗きんとん巡り」なる文化
「中津川 栗きんとん」で検索したら、JR中津川駅周辺の和菓子屋さんがいくつも出てきた。みーんなそれぞれの中津川栗きんとんを作っているらしい。行きたい。
材料の表記としては栗と砂糖でみんな共通しているけど、栗に火を入れるやり方やつぶし具合、栗の種類や砂糖の量など、細かいところでそれぞれのお店の味に違いが出るらしい。行きたい。
そしてなんと中津川駅には、それぞれの和菓子屋さんの栗きんとんをバラ売りしているお店があるそうだ。食べたい。食べ比べしたい。すべての和菓子屋さんをまわれないわれわれ旅行者は、着いた日に全和菓子屋さんの栗きんとんをひとつずつ買って好みの栗きんとんの候補をしぼって、まずはその和菓子屋さんだけ目指せば良いということですな…?
さらに、「栗きんとん巡り」なる魅力的な単語まで発見してしまった。パワーワード。めぐりたい。日本の昔ながらの建築に囲まれながら和菓子屋さんをはしごして栗きんとんの味比べ。名案だ。旅行に行こう。
栗きんとんにはしっとり系とほっくり系があるらしく、今回静岡駅で買った松月堂の栗きんとんはほっくり系らしい。栗のほっくりは感じたけど、比較対象がないとピンとこないのはちょっと残念。巡るしかない。
お取り寄せもあるだろうから、注文しちゃえばいいんだけどね。でも栗きんとん巡りという文化を初めて知ったので、なんとなく巡りたい気分でいる。
季節の食べ物って食べたくなるなあ。秋は特に。
人間には季節や時間の進みをなんとかして実感したい本能・性質があるのかもしれない、とかそんなことを考えてみたり。
今日外に出てみたら富士山が雪をかぶって白くなっているのが見えた。風も冷たくなってきたし、寒い季節が始まっているのを感じる。
私は今、栗が好きな季節だ。