不文律の夢

詩 アイキャッチ画像
当サイトは記事内に商品プロモーションを含む場合があります

破裂がこぼれてちらちら光る。
不文律だ。
ちゃんと固定しておかないから
ぜんぶ星と呼んでしまうことになる。
人は必ず
ひとつは哀しみを
確約されて生まれてくるというのに。
ついうっかりでいつしか
見惚れている。

今は過去の夢ではないと
言い切る種族が
エリンギの笠だけ
食べるにはどうすればよいのか、
叶えあぐねている。
ひらききった夢を前に
夢見る時間に慣れすぎたことを
証明できる。

人はこころに四季をもち
四季はこころに人をもつ。
春が
足音をたててやってくるなら、
雪解けと春の境目を探して
指先でなぞるように
チェロを鳴らそうか。
永遠の、初日に
掬いとったほのかな明度を
譜面におこさず諳んじて。

だれかがテーブルクロス引きをする、
グラスが転がる失敗で
春が広がった。
勇気で黙認すること。
そんな気がしている。

『 不文律の夢 』
    〔 現代詩手帖 2020.2月号 佳作 〕