エッセイ

梅雨は闘志みなぎらないで

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ツンデレベビー

今年の梅雨はなかなかツンデレだ。

降る時にどひゃーっと降って、降らないときれいに晴れるか快適な曇り。

この雨の降り方は、外に出なきゃならない人や自然を相手にしながら生計を立てている人たちにとってはつらいと思う。私はどちらにも該当しないので、申し訳ないけど個人的には珍しく過ごしやすい梅雨だ。

雪などで太陽が出ない日が続く季節や地域は、うつになる人が増えるらしい。それは体感としてわかる。梅雨も例年どんよりとした暗い日が続くから、気分が沈みがちになる実感があった。

しかし今年はちょくちょく晴れる。いつもなら、赤ちゃんが眠いのに寝られず永遠にぐずって泣いてを続けているような空模様なのに、今年はしっかり大泣きしたらぐっすり快眠してくれる。晴れの日を挟んでくれて精神的にはありがたいけど、これは梅雨といえるのか。

梅雨へわがままを言ってみる

梅雨という単語で思い浮かべる雨のイメージって、雰囲気が平安時代か松尾芭蕉の江戸時代くらいで止まっている。いや私はその時代を生きてはいないけど、なんとなく歌や句に詠まれそうな雨を無意識に梅雨として想像してしまう。典型的な梅雨のイメージって、(イメージだからだいぶ上方修正されて、)しとしと降ってお上品だ。情緒。

紫陽花

これはあくまでこころに余裕があるときかつ、快適な場所にいるときの梅雨のイメージ。とても悠長。

現実の梅雨は、ずーっと雨が降り続いて靴も服の裾も持ち物も汚れやすいし、移動するにも傘を差したり仕舞ったりはけっこうめんどくさいし、いちいち濡れるし、髪はままならないし、洗濯物は臭くなるし、いろいろかびやすくなるし、じめじめ蒸し暑くて不快に汗かくし、全然お上品な生活にはならない。梅雨の時期は日々の不便が増える。

しかも暗い日が続いて精神が鬱々しちゃう。ちょっと外に気分転換しにいこーという気にもなりにくい。これが例年の、梅雨らしい梅雨。

今年は西日本で例年より20日以上はやく梅雨入りしたところもあったらしい。逆に東日本は1週間くらい遅かったようだ。東海までで一気に降りすぎて、東日本のぶんの梅雨が減ったのかな。今年の梅雨はペース配分が下手だ。長距離を短距離走して早々にバテている。

その闘志みなぎる感じが全然梅雨っぽくない。雨が続くのは現実的に不便だけど、イメージ上、梅雨というからには余裕でいてほしい。

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今は失われた5月

ただ、晴れると精神的にはやっぱり楽だ。梅雨の不便も少ないし。雨が降らない梅雨の日って結構快適なんだなって思っている。日向にいると暑くなるときはあるけど、日影は快適だし、風に清涼感がある。湿気が比較的少ないのかな。曇っていても快適。窓を開けたくなる。

そして降る時は情緒のかけらもなくバシャバシャ降って豪雨。傘があっても豪雨。ちゃんと降るから空梅雨とも違いそう。

なんと梅雨らしからぬことか。

5月に梅雨入りするくらい梅雨がはやくきたから、西日本ではきっと今、雨が降らない日に5月をとり戻しているんだろう。爽やかで快適な初夏を今こそ。

自然環境の変化として喜ばしいものではないのだろうが、外出の機会を抑えている現状では、晴れる日があると気分が開放的になって、精神的にとてもありがたい。

そしてかえって心に余裕ができて、梅雨の美しさを感じようという気になっているパラドックス。