エッセイ

ココアはマイペースな飲み物でいい

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冬じゃなくてもココア気分

ココアは鍋で作ります。鍋で作る元気があるときにしか作りません。

最近なんだか気候が安定しない。季節の変わり目だからか、暑かったり涼しかったりが日によってけっこう違います。

一度夏のような日差しの日があったから、もう汗をかくような時期なのかと思って夏物を着ていたら今日は寒い、といったことがすでに何度かありました。巣ごもり生活の運動不足も祟ってか、そんな日は室内にいても身体が冷えます。

それで、初夏にもかかわらずココアを作ろうと思い立ちました。ココアが冬だけなんてルールはない…!

ココアの作り方 自分のためのワルツ ver.

牛乳は使うマグカップの7割くらいまで入れて待機。

ココアパウダーを小さいスプーン山盛り2杯。小鍋とヘラで炒める。

弱火でもすぐに色が濃い茶色に変わって、ココアのいい匂いがほわーっと漂ってきます。癒される時間です。

少し水を入れてせっせと練ってかき混ぜる。ダマを撲滅していきます。

粉が溶けたらマグカップの牛乳を入れてゆったり混ぜ続ける。ゆったり。ワルツを想像するとちょうどいいのです。今回はジブリ映画「ハウルの動く城」で流れる『人生のメリーゴーランド』。

細かな薄茶色の泡がココアの表面をもやーっと覆ってきたら火から下ろして、茶こしを通してマグカップにそそぐ。茶こしが大事。忘れずに。

甘味ははちみつで。小さいスプーン3杯分。

3杯分といってもしっかり掬うのではなくて、瓶の中のはちみつにスプーンの丸みを帯びた先3分の2を沈めて、はちみつがスプーンを覆う感じ。

スプーンを持ち上げてくるくる回しながらマグカップの上に持っていき、回転を止めるとココアにはちみつがたらーんと落ちていきます。このはちみつのゆるーい遅さ。自分がだいたい落ち切ったと思えるまで好きなだけ待ちましょう。

スプーンについたはちみつが垂れないように気をつけて、またはちみつの瓶にスプーンを沈める。

はちみつがたれる木のスプーン

これを繰り返して3回目でようやくスプーンをココアに浸して、くるくるかき混ぜる。混ぜている間にスプーンについたはちみつは、ここでさらりとココアに溶けていきます。

本当は生クリームがあれば、火を止めた後に少しだけ入れると、舌にしっとりまろやかなココアになってまことに美味。贅沢感が増します。常備していないので今回は割愛。

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優しい飲み物

一井かずみさんの漫画『きっと愛してしまうんだ。』はご存じですか。

繊細で優しい涙みたいな、きらきらした物語です。

そのなかでココアは、人のために作っておいしい飲み物として出てきます。ココアの周りにある人とのつながりの描写が、とても切実であったかいです。ココアがメインのお話ではないですが、とても印象的なココアです。

(全7巻で完結してるよ、読んでみて。)

この作品を読むと、ココアを小鍋で作りたくなります。

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鍋から作るとはいえココア。気楽に飲みたいのでとても「丁寧に作っている」とは言えません。基本的に計量なんてせず目分量だし、温度も毎回熱かったりぬるかったりします。ぬるいとレンジにかけます。テキトーです。

雑でもテキトーでもなんとなく手をかけてる気分とか、小鍋からココアの香りが広がってくる時間が好きです。技術も必要ないし時間を計ったり神経を使うような作業もないので、ココアの香りに素直にリラックスできます。

『きっと愛してしまうんだ。』では人のために作っておいしいココア、人と飲んでじんわりあったまるココアが出てきますが、私は思いっきりひとりで自分のために作ります。笑

人のために向けている視線を、それと同じあたたかな温度感を、自分専用に向けるのもいいかなと。

マグカップと湯気

分量も、自分のために、自分の好みの味になるように、このくらいかな…って毎回変えて理想に近づけていく感覚。忘れがちだけど忘れたくないことだなって思います。

私はできた人間じゃないので、人への余裕のためにもまずは自分を満たしていくことから。自分用のココアのレシピが完成してやっと、他の人の好みも考えたり感想を聞いて調整したりすることができる。

(人とココアを飲むのもそりゃあもちろん幸せな時間です。)

覚悟のいらないココア

気楽に気負わず作れるっていうのが大事。ほんのり甘くてココアの匂いも色も優しくて、たまに無性に飲みたくなる。飲むときだって、苦みや甘みにキツさがないから一口一口に覚悟がいらない。甘い飲み物を昔より飲まなくなったけど、ココアは定期的に欲しくなります。

でもマグカップとレンジでココアを作ると、ダマがたくさんできるからちょっと残念な気分になります。

小さいころからどんなに頑張ってひたすら混ぜてみても、最後に必ずダマを見ることになっていました。もう火も使える年齢になっているので、それならマグカップで頑張るより小鍋で気楽に作ったほうがいいって結論に至りました。

残念気分を残さないために、鍋で作る元気がないときはココアを飲む気になりません。洗い物が増えても許容できるときだけ。ダマを消すところでも頑張りたくないのです。

ココアは気楽に作るもの。自分の素のままで飲むもの。

ただひたすらに優しいんだ、ココアは。