きみがくれたラムネ

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明るくて透きとおった悲しみが
あの日のラムネの瓶になる。
きみがくれたんだよ。

ワレモノは
割れたあとのほうが安心して美しい。
光るから。

存在したから裏側をもってしまったもの。
自分の感情に対して
まるで他人事のような顔ができるなんて。
「(浅い喉から出る言葉)」、こんなにも嘘が
上手につける自分を知ったのは
いつが最初だったかな。

ビーチボールを借りに行ったきみが
ついでだと言ってラムネを買ってきた。
くれたラムネともらったラムネの
本意がすれ違ったことに
ずっと気づかないでいて。
もう長いこと
割れつづける音がしている。

言えない言葉がまだあることが
時の止まった希望であり、
今世は叶わない牢屋だ。
扱い方と棄て方をどちらも教わらず、
いつまでも存在してしまうビー玉。
美しい足枷よ。

遊ぶための海にみんなで行った日、
きみと一緒に更衣室を出た。
まぶしかった。
着替えるはやさが同じくらい そんな
きみの不覚を知れたことが
うれしかったんだよ。

『 きみがくれたラムネ 』
   〔 第33回 伊東静雄賞 佳作 〕