ベランダや軒下に雨は降らないのに
そこは雨の匂いに満ちることができる
異世界でないなら
ひどいルール違反じゃないか
それとも
部屋のなかにまで雨の気配が満ちるのには
現代物件は狭すぎる物理なのか
(一向に誰かわからない
(「待ち人来る」ずっと待ち人のひとがいる。
まだ部屋のなかに雨が降らない今どき
空もまた雨漏りせずにいる
(神社のおみくじは
(笑っておいてお守りとして
(ひそかに信じているタイプ。
「部屋にそらがないなあ」
室内で傘を差してみれば
部屋にもそらを呼びこめる気がした それは
すこし控えめな挙手だったのに
(傘の模様もしずくのあみだくじも
(空のみる白昼夢として言わずに信じておいている。
「そらに部屋がない」
なにから作ればそらの部屋になるのかわからなくて
そらの下でバケツを抱えて
部屋の中央からつくってみる
(南天、途方に暮れている様子)
(見上げる。言わない
(無意味つづり。
待ち合わせ場所
って
こういうできごと。
(
『 つつうらうら 』
〔 望星 2022. 10月号 詩味礼讃 選外佳作 〕
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