内壁の

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食後のドリンクの注文をキッチンの店長にとおして
BJ500 と書く
のは
ぼくの仕事
お皿か、お金か、コーヒー豆か、
なにかしらあってなくならない
から
生きてる
いつか教わったto doリストを優先順にこなす


そうして、なんにも終わらなくても
バナナジュースはできあがる
母親と幼児のまん中に提供して
BJ500の伝票をテーブルへ
そしてミキサーを洗う
のは
ぼくの仕事

ミキサーの内壁に残る
透きとおったつぶつぶ
グラスに移りきれず座礁した
バナナの残りかす
琥珀の破片が砂の波打ち際に散ったような
大事にされることのないもの
バナナの白っぽさを放ったそれは
たしかに洗われて
意義などもたなかった

親子の帰りどき、
お会計に100円玉を五枚受け取って
BJ500を用済みにし
テーブルを片すと
グラスの内壁 そこにも
琥珀は座礁していた
BJ500と書くのは
今日のぼくの仕事だった
どこにでもある安堵で
洗い流される
のは
ぼくの仕事だった

『 内壁の 』
    〔 現代詩手帖 2019. 1月号 佳作 〕